一觴一詠12〜蜃気楼のごとく

ビル群を見返る間際 海市消ゆ
季語:海市

今回は冒頭に句を載せてみました。解説は後回しで、しばし近況報告ついでに、この句にも底流する僕の最近の情緒を、まずは垂れ流したいと思います。

先日、二週間弱程度の逃避行を終えて、悲しいことに、東京に戻ってまいりました。相変わらず、灰色の谷底で一人虚しく息をひそめ、たまにゆらゆらと泳いでは、すぐに仮の巣に戻るというふうな生活を送っています。

つくづく、嫌悪します。

不浄なる俗物の吹き溜まりに打ち棄てられたのだ、というような思考に全身を浸らせては、こうやって要らぬ言葉を紡いで、甲斐もない繭の中に篭る毎日です。

しかし、このような観想を抱くことが、果たして異常なのでしょうか。

異常な思考とは、何を指すのでしょうか。

正常と異常の差とは、それほどに明瞭かつ自明なものでしょうか。

虫も再びこもってしまいそうな冴え返りの雨のもとで、私は冬ごもりするかの如く、虚ろな空を見上げることのみをするか、或は、電脳世界の情報の氾濫に身投げして、自らを、ひたすらにその海中の成分・要素を体内に循環させては排出するだけの、単細胞と化せしめることに、今日という有限の時間を過ごしてしまいました。

旅行、楽しかったんですけどね。
帰省も楽しかったんですけどね。
友達と会って癒されたんですけどね。

全てが夢でなかろうか。水中の脳が見たVRではないか。
邯鄲の枕だったのではないか。それとも胡蝶の夢だったのか。
私が会ったのは実在者だったのか。
というような考えに至らしめらるるまでに、自ら心外なほど心が疲弊していたことに、今回の帰省で知らされました。

全てが、幻影であれば楽だなと思います。
今が、実は高校二年生のある日の長大な夢枕でさえあれば。
そんな夢想にシナプスを使うばかりの無色を、それでも生きていると言ってよいのでしょうね。

さて、そんなこんなで、上にもすでに載せましたが、今回のチャレンジングな一句の解説を、やっとこさ始めてみましょう。

ビル群を見返る間際 海市消ゆ
季語:海市

ちなみに海市とは蜃気楼のことです。都会を背にして海を眺めていた人が、海市が消えたのを眼にして、自身の背後の都会までもが幻影ではないかという不安に突如かられ、慌てて振り向いた、というのを詠んでみました。

チャレンジングといったのは、語順のことです。
実は、次のようなも検討したんですね。

蜃気楼消えビル群を振り返る

わかりやすいことだけを重視するのであれば、やはり下の句を選ぶべきでしょう。しかしながら、これだと全体的に調子が緩い印象がしませんか。

僕が意図したのは、現実と虚構の狭間に、一瞬投げやられた人間の焦燥を描くことでした。とすれば、最後まで切れを作らずに流れさせ、時系列を忠実に順序通りに描き、海市という季語を最初に種明かしのごとく持ってくるのは、散文的である、創意工夫に欠けるなどということ以前に、僕が一番描写したい人間の感情を、結局描き切れないことになります。

下五に「海市消ゆ」として、消えてしまう光景を読者の心象に残した方が、読者の共感に呼び起こしたい焦燥感を表現できるかなぁという淡い期待のもと、最終的にこのような句と決定し、掲載に踏み切りました。

みなさま、いかがでしょうか。今回も、何かご意見ありましたらば、気軽にコメントをお寄せください。句作に関すること、リクエスト、異議など、なんでも大丈夫です。ご遠慮することなくお伝えくださいませ。


例のごとく、まだまだ推敲に悩んでいます。例えば、わざとここで破調+字余りにして、

ビル群を見返る二秒前の海市

とか。。。
どうしましょ。
何かしら他案ございましたらばコメント欄にて受け付けますので、どうぞ宜しくお願いします。



ここまで読んでいただいたならば、ついでに拍手していっていただけると嬉しいです。意外にこういうことを気にする方ですので、優しい方はお願いしますw
スポンサーサイト

テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

非公開コメント

Thank you!
プロフィール

タカマティー

Author:タカマティー
日本語を愛し、詩歌を愛し、戦後保守主義主流を志向しつつ、たまにリベラルに身をやつして腐敗した権力を批判することもあるような、そんな大学生のブログです。

穏やかなる播磨の灘の凪を母とし、猛き鷺城を支配するかのごとき桜並木を父として、18年間を彼の地に過ごしたのち、メトロポリスTOKIOへやってまいりました。

本ブログは、日々のよしなしごとを書き散らし、ほどほどの厭世気分を吐き出していく場として活用する所存です。よって、おそらく掃き溜めのごとき文字列を、皆様にはご提供することでしょう。皆様におかれましては、御自力で、その中に鶴をみつけてくださればと思います。

「白玉楼中の人となる」
:文人が鬼籍に入ること。
 cf. 「司馬遼太郎は本物の文人であった。彼は、白玉楼中の人となったに違いない。」

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
俳句の人気記事はこちら!
哲学・思想の人気記事はこちら!
文系大学生の人気記事はこちら!
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSリンクの表示
QRコード
QR
リンク