オキソカーボンの折節

焦臭い部屋の明るさ初火燵
季語:初火燵(後述)

果物をむく午後九時の炬燵守
季語:炬燵

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旅館みたいな雰囲気の、ある種「行儀の良さげな」炬燵の風景ですね。私が愛着のある炬燵は、もっと崩れていて、擦り切れてヨレヨレになっていて、大昔に私や弟が汚した跡が残っているような、そんな炬燵ですけれど……


本日、一人暮らしの部屋に炬燵を出しました。溜まっていた埃が電気炬燵の熱に焦がされた匂いがしばらく部屋に充満していましたが、それもご愛嬌でしょう。炭素酸化物(一酸化炭素やCO2など)が気になって換気はしましたが、その匂いも含めて懐かしく感ぜられ、インスパイアされ、記事を更新している最中にございます。

ということで、本日の俳句は、非常に個人的な経験を基にしております。よって、懐かしさの押し売りのような句になっていることに鬱陶しさを感じられる方もおられましょう。その点につきましては、心苦しいですが、どうかお許しください。みなさん一人一人にある炬燵の思い出と呼応することができていればと思います。

句の内容について言及せねばならないのは、まず一句目の「初火燵」という季語についてでしょう。

「初」のつく語には、新年の季語となるものが数多く存在します。「初夢」「初日(初日の出)」「初日記」など、挙げればきりがありません。

しかしその一方で、「その年の最初の」という意味で用いられる語も多いため、例えば「初紅葉」は秋、「初雪」「初時雨」は冬の季語となります。当然、「初夏」は夏の季語になりますしね。

となると、初火燵はどちらでしょうか。その冬、初めて出した火燵を指すのか、それとも新年最初の何かおめでたい意味のある言葉なのか。手持ちの歳時記(「第三版 俳句歳時記」角川文庫)に「初火燵(初炬燵)」そのものの季語としての掲載が無かったため、使ってもよいかとは思ったものの、無闇に使用するのは流石に躊躇われたので、ネット上においてではありますが、検索して調べてみました。

すると、以下のような例句が見つかったのです。
作者名、掲載の俳誌名も明示しておきます。


誰彼の話してゆきし初炬燵 高倉恵美子 『空』
安楽死できそな予感初炬燵 山元志津香 『八千草』
初炬燵開く亡き妻在るごとく 沢木欣一 『万象』
今日からはひとりの部屋に初炬燵 大内幸子 『六花』


これらを拝見するに、「その冬最初の炬燵」という意味で捉え、冬の季語だと考えても良さそうな気はします。もし新年の季語であればイメージがおかしくなってきますから、「火燵張る」等に変えた方が良いでしょうが、「初火燵」についての正確な情報が得られなかったので、そして何より、埃を焦がす匂いすらも愛おしいような、そんな久方ぶりの火燵のある部屋の明るさ、温かさを表現することにおいて、「初火燵」の音韻が最も一致するのではないかと思ったものですから、一旦はこのままで置いておこうと思います。何かご存知の方がいらっしゃれば、コメントにてご意見、アドバイス等頂戴できれば幸いです。

もう一つ、蛇足ではありますが、二つ目の句の「果物」「炬燵守」というのは、それぞれ「はっさく」「母」のイメージで句作いたしました。共働きだったので、夕飯の片付けや洗濯物の取り込み・収納、風呂の用意などが全て一段落する午後九時くらいにならねば、母はゆっくり炬燵に入ることもできなかったためです。まぁしかし、この果物をどんな炬燵守がむいているのかは、各人の思い出に依存してしまってもいいのかもしれませんね。蜜柑でも、葡萄でもいいですし、父や兄・姉、祖父母、あるいは彼氏・彼女や旦那さん・奥さんでも、何でも誰でもいいのです。みなさんの思い出を呼び起こせたのであれば、作者冥利に尽きます。

それにしても、早くも炬燵を出すような時節となったのですね。

もう11月ですか……

焦臭い部屋の明るさ初火燵
季語:初火燵

果物をむく午後九時の炬燵守
季語:炬燵



<追記>
記事更新から二十分ほどの間、二句目について、以下のようにしておりました。

はっさくをむく午後九時の炬燵守

しかし、ハッとして少々調べておりましたところ、「はっさく」というのは「八朔柑」の形で、春の季語として前掲の歳時記に記載されておりました。「初火燵」は調べておいて、我ながら自分自身の迂闊さに呆れるばかりです。私の知識の浅薄さ、軽薄さゆえの、完全なる季重なりで公表するというような醜態を晒したことを、ここに謹んでお詫び申し上げます。

その上で、以後は一切このようなことがないよう益々精進してまいりますので、暖かく御見守いただければ幸いです。宜しくお願い申し上げます。
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